2009年02月01日
事故解決はマニュアル選びが重要! 「無料交通事故マニュアル比較ナビ」
■ むち打ち症は裁判で不利になるか(2)
頚椎捻挫いわゆる「むち打ち症」での民事交通事故損害賠償訴訟の
判決の中には、「むち打ち症」ゆえの独特な判例が存在します。
前回は6例ほどご紹介しましたが、今回は後3つほどお話したいと
思っています。
大阪地裁で平成10年12月に出された判決は、逸失利益を否定してし
まい、その部分は慰謝料の増額事由等で解決すると言うものです。
後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求する
ことは当然ですが、将来にわたって就労に支障がないと裁判所が
判断したため、逸失利益を算定せずに慰謝料を増額することにより
解決した例です。
何故このような判断が示されたかといいますと、これはあくまでも
赤鬼の想像ですが、裁判所側が原告の症状に関して多少なりとも疑
問を持ったからではないかということです。
被害者の症状は全くうそを言っているわけではないが、かといって
休業損害や逸失利益を完全に認めるだけの明確な根拠もない。
限りなく詐病に近い状態ではないかとの考えがあったのではないか
と赤鬼は想像しています。
■ 最近の裁判において多くなってきた「割合的認定」
次の事例は、最近多くなってきている割合的認定のお話ですが、
これは事故が後遺障害に対してどの程度関係しているか、言い換え
ると寄与率や寄与度についての裁判所の判断についてです。
これは、民法第722条の過失相殺部分が類推適応できるかできないか
と言う問題でもあります。
具体的には、被害者の請求する賠償額が発生した過程で、被害者に
心因性及び身体的特徴、既往症による疾患等の原因がある場合、
過失相殺の原理を適応するかしないのかということです。
本日は、少々難しい部分をお話していますが、「むち打ち症」にお
ける後遺障害認定や損害賠償訴訟では大変重要な部分ですので、
是非ともご理解いただければと思います。
【参考】
民法第722条
1.第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2.被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、
損害賠償の額を定めることができる。
※ 第417条
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもって
その額を定める。
■ 民法第722条の過失相殺部分を類推適応する場合
心因性及び身体的特徴、既往症による疾患について、それぞれ興味
深い判例がありますので、ご紹介します。
▼ 心因的要因が寄与するものは過失相殺を類推適応する
交通事故損害賠償に関わっていると結構有名な判例で、昭和63年
最高裁で争われた事例です。
事故受傷日が昭和44年3月、症状固定日が昭和55年5月と非常に長
い治療期間を要した原告に対する判決では、
「すなわち、右損害は本件事故のみによつて通常発生する程度、
範囲を超えているものということができ、かつ、その損害の拡大に
ついて上告人の心因的要因が寄与していることが明らかであるから、
本件の損害賠償の額を定めるに当たつては、民法722条2項の過
失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した上告人の
右事情を斟酌することができるものというべきである。
そして、前記事実関係のもとでは、事故後昭和47年3月20日ま
でに発生した損害のうちその4割の限度に減額して被上告人らに負
担させるのが相当であるとした原審の判断は、結局正当として是認
することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用するこ
とができない。
よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致
の意見で、主文のとおり判決する。」
この判決は、最高裁として初めて過失相殺法理を適応した画期的な
判決です。
要するに、治療が長期(11年)に及んだのは心因的要因が寄与して
いることが明らかであるとし、事故から3年間のみ事故との因果関係
を認め、しかも損害額の4割を減額するというものです。
■ 民法第722条の過失相殺部分を類推適応しない場合
▼ 被害者の身体的特徴を斟酌(しんしゃく)することはできない
むち打ち症の裁判においては非常に有名な判決で「首長判決」と呼
ばれています。
これは、いわゆるストレートネックと呼ばれる首の特徴で、普通の
人は頚椎に自然な湾曲(生理的湾曲)がありますが、頚椎に湾曲が
なく首がまっすぐに伸びている為、交通事故等の外力を受けると普
通の人よりも怪我の程度が大きくなります。
そのことに対する裁判で、首が長かったから事故による損害が発生
してしまったとする保険会社と損害額を定めるにあたって身体的特
徴によって斟酌するべきではないと主張する被害者の争いです。
首が人より長いのがいけないと言われても、好きで長くなったわけ
ではなく、生まれつきの身体の特徴ですのでどうにもなりません。
その判断が、この首長判決です。
最高裁平成8年10月29日判決
「しかしながら、被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる
身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合に
は、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償
の額を定めるに当たり斟酌することはできないと解すべきである。
けだし、人の体格ないし体質は、すべての人が均一同質なものとい
うことはできないものであり、極端な肥満など通常人の平均値から
著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、転倒などにより重大な
傷害を被りかねないことから日常生活において通常人に比べてより
慎重な行動をとることが求められるような場合は格別、その程度に
至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として当然にその存
在が予定されているものというべきだからである。
これを本件についてみるに、上告人の身体的特徴は首が長くこれ
に伴う多少の頸椎不安定症があるということであり、これが疾患に
当たらないことはもちろん、このような身体的特徴を有する者が一
般的に負傷しやすいものとして慎重な行動を要請されているといっ
た事情は認められないから、前記特段の事情が存するということは
できず、右身体的特徴と本件事故による加害行為とが競合して上告
人の右傷害が発生し、又は右身体的特徴が被害者の損害の拡大に寄
与していたとしても、これを損害賠償の額を定めるに当たり斟酌す
るのは相当でない。」
このような判決になっています。
しかし、ここで1つの問題があります。
首が長いという身体的特徴の場合は斟酌すべきではないということ
になりましたが、身体的特徴には後従靭帯骨化症(OPLL)などの頚
椎疾患もありますので、そのような疾患を持っている方が事故によ
り頚椎に強い衝撃を受けた場合、大変大きな怪我になってしまいます。
後従靭帯骨化症(OPLL)は、頚椎の後方にある首を支える靭帯です
が、人によっては年齢を重ねると骨のように硬くなってしまう疾患
で、強い衝撃を受けると頚椎が曲がらずに折れるような動きになり、
神経に大きなダメージを与えます。
このような身体的特徴を持った被害者の場合は、平成8年10月29日の
最高裁判決では、「被害者が頚椎後従靭帯骨化症を持っていてると
ころに、加害者行為が加わり双方の原因により損害が発生した場合
において、頚椎後従靭帯骨化症ははっきりとした疾患であるから、
当該疾患の態様や程度により、加害者に損害の全てを賠償させるこ
とが公平を失するときは、民法722条2項の規定を類推適応して、被
害者の疾患を斟酌することができる」としています。
【参考】
※ 斟酌(しんしゃく)
相手の事情や心情をくみとること。また、くみとって手加減すること。
「採点に斟酌を加える」「若年であることを斟酌して責任は問わない」
■ まとめ
このように、むち打ち症に関する裁判では色々な要因により解釈が
異なることで、判決も様々な物になっています。
ただいえる事は、先の最高裁判決示すように概ねの解釈はがすでに
できているということです。
▼心因的要因が寄与するものは過失相殺を類推適応する
▼被害者の身体的特徴を斟酌することはできない(損害額の算定に際し)
▼被害者に疾患がある場合は過失相殺を類推適応する
では、ヘルニア等による症状はどの様に解釈すれば良いのかという
ことですが、本日も又長くなってしまいましたので、次回にしたいと
思います。
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