2012年05月
2012年05月23日
事故解決はマニュアル選びが重要!「赤鬼の交通事故マニュアル無料ダウンロード」
今回は、慰謝料増額に関するお話をしてみたいと思います。
「事故の後一度も謝罪に来ない」「実況見分で嘘を言った」などの加害者の
不誠実な態度は慰謝料増額の理由になるかというご質問が多くあります。
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の金額を多くするには、算出基準や交渉の場を
適正に選択する事である程度の増額は可能ですが、加害者の不誠実な態度で
慰謝料を増額する事はできるのでしょうか。
加害者の不誠実な態度が慰謝料を増額する理由となるのであれば、実際に交渉
の場ではどの様な根拠を提示すれば認められるのかという事になります。
そこで、まず慰謝料がどのようなものであるか知る必要があります。
そもそも慰謝料とは何でしょう。
簡単には、心の悲しみや悔しさ、体の痛みや障害をお金に換算したある種の
損害ということになります。
ただ、生命や身体の侵害は、それ自体金銭的評価の対象となる財産とは言えず、
財産権の侵害には当たらないという解釈のため、民法に慰謝料(慰藉料)と言
う言葉はありません。
しかし、実際には損害賠償請求で慰謝料が存在しています。
それは、民法711条に「生命ヲ害シタル者ハ、財産以外ノ損害ニ対シテモ其ノ
賠償ヲ為スコトヲ要ス」とあり、財産以外に何らかの損害があれば、あそれに
対する賠償もしなければいけないとする記述があるからです。
ただ、休業損害や逸失利益のように具体的な数字で表すことのできる損害の
場合はよいのですが、慰謝料のように生命や身体を侵害されたことへの損害
賠償請求では、損害を金銭的に評価することが大変難しくなります。
これらの事から、慰謝料を増額する事に関しても、何を持って増額の根拠と
するか、損害をどのように立証するかはかなり難しい問題となります。
単に加害者が謝罪に来ない、実況見分で嘘を言っていて態度が悪いという
事で増額する事はできないと考える方が無難です。
離婚や名誉毀損などで精神的慰謝料を請求する際でも、請求金額に比べ
実際の判決で提示される金額は思ったより少ないようです。
交通事故の被害者になり精神的な慰謝料を請求しようと考えた場合、
本来無保険車から被害者を救済する為の強制保険としての自賠責保険では
全く考慮されません。
考慮されるとすると、地方裁判所支払基準での解決であり、無料のあっ旋を
してくれる紛センや日弁連の相談センターではなく、本訴訟(裁判)での
請求になります。
地方裁判所支払基準のひとつである「赤い本」では、例えば傷害慰謝料が単に
入通院の日数によってのみ算出されるのでは、本来人間感情を考慮する損害と
しての慰謝料が存在する意味はないと考えています。
※赤い本・青い本についてはブログ記事「地方裁判所支払い基準」
を参照して下さい。
⇒http://safely.blog115.fc2.com/blog-entry-33.html
要するに、慰謝料は生命や身体を害されたことに対する損害であることから、
単純に入・通院の期間や後遺障害等級等を斟酌して算定するのではなく、
人間感情を考慮すべきとしています。
加害者が1回も謝罪に来ないことは不誠実であり慰謝料の増額の理由になると
考える被害者は感情に左右される人間という動物です。
自分の受けた痛み、苦しみ、悲しみを単純に入通院日数などの基準により
算定されることには納得できないとする感情が心の奥底にあり、
「こんなに酷い目にあわせておいて慰謝料を入通院日数等で決めるなんて!」
と不満を持っています。
「赤い本」ではそのような被害者の感情を考慮して、慰謝料増額事由という
部分で「加害者に故意もしくは重過失又は著しく不誠意な態度等がある場合に
慰謝料の増額を要求できる」としています。
では、この「故意もしくは重過失又は著しく不誠意な態度」は具体的に
どのようなものかという事です。
具体的な「加害者に故意もしくは重過失」については、酒酔い運転・
ひき逃げ・無免許・30キロ以上の速度超過・赤信号無視をさしており、
このような場合は被害者及び遺族の怒りや悲しみが大きくなることは
社会通念上疑いの余地がないとしています。
「加害者がお酒さえ飲んでいなかったら、信号無視をしなかったら、免許を
持っていれば、愛する人が死ぬ事はなかった」と思うと、悲しみと怒りは
強くなります。
このような案件で赤い本は、通常の算定基準によって算定された慰謝料を
増額できるとしています。
では、多くの方が慰謝料の増額理由になると考える「著しく不誠意な態度等
がある場合」の具体的な解釈です。
加害者に代わって任意保険会社が医療費や損害賠償支払いをする、いわゆる
任意一括対応が主流になっている昨今、加害者が全てを保険会社に任せて
被害者の見舞いに来ないことはある意味常識化しています。
そのような事から、単に見舞いに来ないことが著しく不誠実といえるかは
難しい判断になります。
ですので、「著しく不誠意な態度等がある場合」として慰謝料の増額ができ
る例としては、裁判において加害者の過失が立証されているにもかかわらず
法廷で被害者の過失を主張した場合や、被害者を見舞った際に「金を払えば
それでいいのだろう?お前も悪いのだからごちゃごちゃいうな」などの暴言
を吐いた場合などが著しく不誠実な態度となり、訴訟において慰謝料の増額
理由となります。
これは余談ですが、被害者もかなり態度が悪く加害者に対して暴言を吐いた
結果、売り言葉に買い言葉で加害者が暴言を吐いた場合などは微妙な判断に
なってきます。
あくまでも被害者が冷静に加害者の過失に対して損害を請求している場合に、
加害者の不誠実な態度が裁判長に認められたとき増額も認められるという事
になります。
今回の結論としては、一般的な軽症案件で保険会社と示談交渉をする際、
加害者が謝罪にも来ないし電話もかけてこないので不誠実であると言って
慰謝料の増額を主張しても、払い渋る保険会社が増額を認めることはない
と考えます。
ただ、加害者から脅かされたり加害者の会社の事故係から脅迫まがいの電話
がかかって来るような場合、音声を録音しておき示談の際にそれを理由に
慰謝料の増額を要求しても良いと考えますし、場合によっては脅迫で訴えて
その訴えを取り下げる条件として慰謝料の増額の話をしてもよいのではと
思います。
又、保険会社に加害者が不誠実だから慰謝料を増額して欲しいなどというと、
この被害者は慰謝料目当てではと足元を見られ、治療継続に思わぬ支障を
きたすことも考えられますので、あまりそのような話はしない方が無難です。
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