2008年09月
2008年09月25日
事故解決はマニュアル選びが重要! 「交通事故マニュアル比較ナビ」
「被害者感情から慰謝料は増額できるか?」 という
お話です。
ご存知のように、交通事故の損害賠償には積極損害、消極損害、
慰謝料という3つの損害賠償があり、示談の際はそれぞれを計算し
合算したものを請求します。
積極損害、消極損害、忘れてしまいました?
では、簡単にお話しますと、積極損害は実際に財布から出て行く
お金です。
代表的なものでは、治療費や通院交通費などです。
消極損害は、事故にあわなければ得られたであろうお金で、休業損
害や逸失利益になります。
そして慰謝料ですが、もともと民法に慰謝料(慰藉料)と言う言葉
は存在していないことをご存知ですか?
生命や身体の侵害は、それ自体金銭的評価の対象となる財産とは言
えないため、財産権の侵害には当たらないという解釈です。
では、何故民法にない損害を賠償請求できるかというと、民法711条
は「生命ヲ害シタル者ハ、財産以外ノ損害ニ対シテモ其ノ賠償ヲ為
スコトヲ要ス」との記述があり、財産以外に何らかの損害があれば、
あそれに対する賠償をしなければいけないとしています。
ということは、積極損害や逸失利益・休業損害のような損害は、
民法上は財産を侵害されたことへの損害賠償と見ることが出来る
ため、金銭的評価も比較的しやすいのですが、慰謝料は生命や身体
を侵害されたことへの損害賠償ですので、金銭的に評価することは
大変難しくなります。
そこで、慰謝料が算定しやすいようにある程度の基準を設けていま
すが、それが自賠責保険支払い基準と地方裁判所支払い基準になり
ます。
それらの基準のお話をしていると、さらにお話しすることが増えて
しまい、最終的にマニュアルになってしまいますので、ここでは省
略させていただきますが、日ごろから関心を持たれていると自然に
身についてくる知識ですので、これからも赤鬼のメルマガ読んで下
さい。
話を本題に戻します。
■ 被害者感情から慰謝料は増額できるか?
赤鬼のメール相談で比較的多いご質問として、「加害者が事故以来
一度も見舞いに来ない、電話もない、そのような不誠実な加害者の
態度は慰謝料を増額する理由になるか?」というものがあります。
確かに被害者にとってそのような加害者の態度に腹が立ちますので、
一般的な慰謝料という解釈からすると増額ができそうな気もします
が、実際は離婚やその他の慰謝料とは違いその程度の理由では増額
することはできないと思ってください。
では、慰謝料の増額ができるのはどのような場合かというお話を少
し詳しくしていきますが、ほとんどの場合は地方裁判所支払い基準
での解決の場合になります。
自賠責保険では、その保険の持つ特性上必要最小限の補償になって
いますので、被害者の感情を酌量し慰謝料を増額してもらうことは
望めません。
地方裁判所支払い基準では、慰謝料増額について触れていますので
ご紹介します。
地方裁判所支払い基準は弁護士会が損害賠償の算定を容易にするた
め、独自に作成しているものですが、現在スタンダードな基準とし
て赤い本と青い本があります。
※赤い本・青い本についてはブログ記事「地方裁判所支払い基準」
を参照して下さい。
⇒http://safely.blog115.fc2.com/blog-entry-33.html
赤鬼は赤い本がスタンダードと考えていますので、これからのお話
も赤い本を基準にしていきます。
余談ですが、赤鬼だから赤い本ではなく、東京弁護士会の考え方が
これからの日本のスタンダードになると強く感じているからです。
さて、実際の赤い本でどのような解釈かは「慰謝料増額事由」で
解説されています。
この慰謝料増額事由の根底にあるものは、先ほど慰謝料は生命や
身体を害されたことに対する損害のため、その基準とするものが
なく、単純に入・通院の期間や後遺障害等級等を斟酌して算定され
ていることに対する人間感情を考慮しようという考えです。
元々人間は感情の動物ですので、自分の受けた痛み、苦しみ、悲し
みを単純にそのような基準により算定されることには納得できない
とする感情が心の奥底にあり、こんなに酷い目にあわせておいて通
院日数等で決めることに不満を持っています。
■ 赤い本による慰謝料増額事由
「加害者に故意もしくは重過失又は著しく不誠意な態度等がある
場合」に慰謝料の増額を要求できるとしています。
具体的に「加害者に故意もしくは重過失」については、酒酔い運転・
ひき逃げ・無免許・30キロ以上の速度超過・赤信号無視をさしてお
り、このような場合は被害者及び遺族の怒りや悲しみが大きくなる
ことは社会通念上疑いの余地がありません。
「加害者がお酒さえ飲んでいなかったら、信号無視をしなかったら、
免許を持っていれば、愛する人が死ななくてすんだのに」というよ
うな場合、悲しみと怒りは強くなります。
このような案件では、通常の算定基準によって算定された慰謝料を
増額できるとしています。
次は、良くご質問のある「著しく不誠意な態度等がある場合」の
解釈ですが、現在のように加害者に代わって任意保険会社が医療費
や損害賠償支払いをする、いわゆる任意一括対応の場合は加害者が
被害者の見舞いに来ないことが次第に常識化していく中で、単に見
舞いに来ないことが著しく不誠実といえるか難しい判断になります。
確実に慰謝料が増額できる例としては、裁判において加害者の過失
が立証されているにもかかわらず法廷で被害者の過失を主張した場
合や、被害者を見舞った際に「金を払えばそれでいいのだろう?
お前も悪いのだからごちゃごちゃいうな」などの暴言を吐くと、著
しく不誠実な態度となり、訴訟において慰謝料の増額理由となりま
す。
とりあえず訴訟になった場合は、加害者が不誠実かは弁護士の判断
に任せるとして、一般的な軽症案件で保険会社と示談交渉をする場
合、加害者が不誠実と言って慰謝料の増額を主張しても、本来支払
うべきものも出さない保険会社が増額するわけがありませんので、
止めておいた方が示談が円滑に進みます。
あまりに加害者の態度が悪く、被害者を屈辱したり責任転嫁をする
ようでしたら、証拠となる音声を録音しておき、紛争処理センター
や日弁連交通事故相談センターに解決を持ち込むようにして下さい。
事故解決はマニュアル選びが重要! 「交通事故マニュアル比較ナビ」
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2008年09月16日
「損害を請求しないという口約束は有効!?」
問題:
Aさんは念願の自動二輪の免許を取り、大好きなバイクを購入し通
勤していました。
ある日、仕事を終えていつものように帰ろうとしていると、同僚の
Bさんが後ろに乗せて欲しいといってきました。
Bさんのバイクの調子が悪いということと、自宅がAさんの帰宅経
路の途中ということで、Aさんにバイクの後ろに乗せて欲しいと頼
みました。
しかし、Aさんは免許取り立てで2人乗りの運転に自信がありません
でしたので断りました。
しかし、Bさんが「事故が起きて怪我をしても損害を請求しない」
といってしつこく頼むので、仕方なく乗せることにしました。
案の定、免許取立てで運転に不慣れなAさんは、ふらふらと運転し
ついにカーブを曲がり切れずにガードレールに衝突してしまいました。
Bさんは脊髄損傷で下半身麻痺の重症になってしまい、任意保険に
加入していないAさんに対し、自賠責保険の支払額で不足する金額
を請求してきました。
しかし、AさんはBさんが事故でも損害を請求しないといったので
同乗させたとし、支払いを拒否しました。
Aさんは、このまま支払わなくても良いでしょうか?
------------------------------------------------------------
正解:
このような重症事故の場合は、被害者保護の観点からいくら被害者
が一切の権利放棄と免責を加害者に事前に与えたと主張しても、認
められる物ではありません。
損害賠償請求件の事前の放棄ないし事前の免責の特約を認める場合
は、東京地裁の判決で5つの条件を示していますが、その中に「同乗
者の被害の程度が軽度であること」というものがあります。
実際、このAさんとBさんの場合、訴訟による判決はBさんの治療
費は全額負担、逸失利益と慰謝料は30%減額になりました。
とはいうものの、逸失利益と慰謝料が30%減額になったとしても、
下半身不随のBさんの損害額は創造を絶する金額ですので、Aさん
はちょっとした親切心から一生引きずらなくてはいけない精神的
苦痛、金銭的苦労を背負うことになります。
知り合いを乗せてあげるときは、このような場合もあることを心の
片隅に覚えておいて下さい。
事故解決はマニュアル選びが重要! 「交通事故マニュアル比較ナビ」
2008年09月05日
「損害を請求しないという口約束は有効!?」
問題:
Aさんは念願の自動二輪の免許を取り、大好きなバイクを購入し通
勤していました。
ある日、仕事を終えていつものように帰ろうとしていると、同僚の
Bさんが後ろに乗せて欲しいといってきました。
Bさんのバイクの調子が悪いということと、自宅がAさんの帰宅経
路の途中ということで、Aさんにバイクの後ろに乗せて欲しいと頼
みました。
しかし、Aさんは免許取り立てで2人乗りの運転に自信がありません
でしたので断りました。
しかし、Bさんが「事故が起きて怪我をしても損害を請求しない」
といってしつこく頼むので、仕方なく乗せることにしました。
案の定、免許取立てで運転に不慣れなAさんは、ふらふらと運転し
ついにカーブを曲がり切れずにガードレールに衝突してしまいました。
Bさんは脊髄損傷で下半身麻痺の重症になってしまい、任意保険に
加入していないAさんに対し、自賠責保険の支払額で不足する金額
を請求してきました。
しかし、AさんはBさんが事故でも損害を請求しないといったので
同乗させたとし、支払いを拒否しました。
Aさんは、このまま支払わなくても良いでしょうか?
------------------------------------------------------------
正解:
このような重症事故の場合は、被害者保護の観点からいくら被害者
が一切の権利放棄と免責を加害者に事前に与えたと主張しても、認
められる物ではありません。
損害賠償請求件の事前の放棄ないし事前の免責の特約を認める場合
は、東京地裁の判決で5つの条件を示していますが、その中に「同乗
者の被害の程度が軽度であること」というものがあります。
実際、このAさんとBさんの場合、訴訟による判決はBさんの治療
費は全額負担、逸失利益と慰謝料は30%減額になりました。
とはいうものの、逸失利益と慰謝料が30%減額になったとしても、
下半身不随のBさんの損害額は創造を絶する金額ですので、Aさん
はちょっとした親切心から一生引きずらなくてはいけない精神的
苦痛、金銭的苦労を背負うことになります。
知り合いを乗せてあげるときは、このような場合もあることを心の
片隅に覚えておいて下さい。
事故解決はマニュアル選びが重要! 「交通事故マニュアル比較ナビ」
問題:
Aさんは念願の自動二輪の免許を取り、大好きなバイクを購入し通
勤していました。
ある日、仕事を終えていつものように帰ろうとしていると、同僚の
Bさんが後ろに乗せて欲しいといってきました。
Bさんのバイクの調子が悪いということと、自宅がAさんの帰宅経
路の途中ということで、Aさんにバイクの後ろに乗せて欲しいと頼
みました。
しかし、Aさんは免許取り立てで2人乗りの運転に自信がありません
でしたので断りました。
しかし、Bさんが「事故が起きて怪我をしても損害を請求しない」
といってしつこく頼むので、仕方なく乗せることにしました。
案の定、免許取立てで運転に不慣れなAさんは、ふらふらと運転し
ついにカーブを曲がり切れずにガードレールに衝突してしまいました。
Bさんは脊髄損傷で下半身麻痺の重症になってしまい、任意保険に
加入していないAさんに対し、自賠責保険の支払額で不足する金額
を請求してきました。
しかし、AさんはBさんが事故でも損害を請求しないといったので
同乗させたとし、支払いを拒否しました。
Aさんは、このまま支払わなくても良いでしょうか?
------------------------------------------------------------
正解:
このような重症事故の場合は、被害者保護の観点からいくら被害者
が一切の権利放棄と免責を加害者に事前に与えたと主張しても、認
められる物ではありません。
損害賠償請求件の事前の放棄ないし事前の免責の特約を認める場合
は、東京地裁の判決で5つの条件を示していますが、その中に「同乗
者の被害の程度が軽度であること」というものがあります。
実際、このAさんとBさんの場合、訴訟による判決はBさんの治療
費は全額負担、逸失利益と慰謝料は30%減額になりました。
とはいうものの、逸失利益と慰謝料が30%減額になったとしても、
下半身不随のBさんの損害額は創造を絶する金額ですので、Aさん
はちょっとした親切心から一生引きずらなくてはいけない精神的
苦痛、金銭的苦労を背負うことになります。
知り合いを乗せてあげるときは、このような場合もあることを心の
片隅に覚えておいて下さい。
事故解決はマニュアル選びが重要! 「交通事故マニュアル比較ナビ」