2008年05月
2008年05月29日
【賠償の雑学】 人身と物損事故で過失割合が違う!?
【質問】 「 同一の事故で示談をする際に、物損が20:80
人身が10:90のように異なった過失割合でも
問題ないでしょうか?」
というメール相談をいただきました。
------------------------------------------------------------
【正 解】 問題はありません(条件はあります)
これは、示談ですので加害者と被害者が納得していれば、何でも
良いわけです。
ただ、双方あるいはどちらかに任意保険会社が関与している場合は、
保険会社の意向を無視して加害者と被害者が勝手に過失割合を決める
ことはできません。
できませんというより、保険会社が支払を拒否することがあります
ので、加害者、被害者、任意保険会社十分に話し合って決めること
が大切です。
この質問者の場合は、加害者側、被害者側双方の保険会社同士の話
し合いでそのようなことになったということです。
この解釈としては、元々の過失割合は20:80であるが、人身に関し
て被害者は痛い思いをしていますので、そのことを考慮して10:90
にしてくれたと解釈できます。
又、あまりにも加害車輌と被害車輌の修理費に差が出てしまう場合、
保険会社同士の話し合いで過失割合を物損のみ操作することがあり
ます。
これは、痛み分けとでも解釈すれば良いと思いますので、対物保険
に加入している場合、物損に関しての過失割合で神経質になる事は
ありません。
対物保険に加入していない場合は真剣に争うことになりますが、車
を保有するのであればしっかりと任意保険にご加入されることをお
勧めいたします。
場合によっては、被害者なのに加害者の車の修理代を払わされるこ
とも十分ありえます。
えっ?! と思われるかもしれませんが本当の話ですので、次回ご
紹介しますので、どうぞお見逃しのないように!
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2008年05月26日
■ 示談屋に要注意!
示談のお話をするうえで避けては通れない示談屋ですが、
彼らの全盛期は昭和の高度成長期でした。
車の数が爆発的に増加したことに比例して交通事故も増加しました
が、任意保険に加入することが一般的ではなかった時期に示談屋が
暗躍しました。
強制保険にしか加入していない加害者は、今で言う自賠責保険支払
基準における人身傷害限度額を超えてしまった損害賠償に対しては
自腹で被害者に払わなくてはなりませんでした。
任意保険に加入するお金もない、言い換えればお金に余裕のない人
ですので、当然被害者に高額の損害賠償の支払を求められても支払
えるはずもありません。
そのような、加害者と被害者の弱みに付け込んで詐欺同然、あるい
は完全な詐欺を働く輩が示談屋です。
年齢の若い読者さんには、示談屋といってもあまりピンと来ないか
もしれませんので、どのような行為をする人たちか簡単にお話しし
ようと思います。
昔のことを持ち出しても分り難いと思いますので、現代における例
をご紹介しますと、まず交通事故が発生し加害者が任意保険に加入
していない場合になります。
理由は、加害者が任意保険に加入していれば、その任意保険会社の
担当者が被害者と示談交渉をしますので、示談屋さんの出る幕があ
りません。
加害者が任意保険に加入していない場合、人身傷害は自賠責保険か
ら120万円を限度として支払われますが、物損(車の修理代)は自
賠責保険からは支払われませんので、加害者が自腹で払わなくて
はなりません。
このときに、修理代を値切ってあげるからといってどこからともな
く現れてくるのが示談屋になります。
彼らは、どこでそのような情報を仕入れるのか不思議なくらい臭い
をかぎつけて現れます。
値切るといっても、自動車修理工場に行って修理代を安くしてくれ
と頼むのではなく、被害者に直接交渉して示談書にハンコを押させ
ます。
その示談書こそが、示談屋の詐欺の手口になります。
その内容は色々ですが、交通事故は始めての被害者がほとんどです
ので、言葉巧みに言いくるめられ言われるままに判を押してしまい
大損をすることになります。
ひとつの例として、仮に修理代が見積もりで60万円かかるとします
と示談屋は示談書を30万円の金額で今後一切請求しないという内容
で、巧みに作成してきます。
示談屋は、被害者に「これはとりあえずの手付金ですので、示談後
に修理が終った時点で残りの修理代をお支払します」と巧妙な話術
で印鑑を押すように言いくるめます。
何も知らないお人よしの被害者は、示談屋の優しい態度のすっかり
安心して印鑑を押してしまいますが、後で示談書をよく読んでみる
とさあ大変です。
示談書には、この一時金を持って今後一切の請求をいたしませんと
いう内容になっています。
示談書に証明捺印してしまっては、もうないを言っても後の祭り
です。
この被害者は30万円を損しましたが、この示談書の一時金の金額が
5万円でもいいわけですので、損害は示談屋のやり方次第になります。
この被害者が、物損だけで済んだ場合はまだ良いのですが、人身傷
害を負っていて治療費、通院交通費、休業損害等で自賠責保険の限
度額120万円を超える損害が出たとします。
先ほどの示談書に「人身傷害部分も含めて、今後一切の請求をしな
いものとする」と書かれていた場合、自賠責で不足した部分の請求
ができません。
例え自賠責で後遺障害の認定を受けても、地方裁判所支払基準で損
害を算定できませんので、大変な損をすることになします。
場合によっては、1000万円いやそれ以上の本来受取ることのできる
損害賠償金が受取れなくなってしまいますので、要注意です。
では、何故示談屋がこのようなことをするのかというと、いたって
簡単です。
先ほどの例ですと、本来加害者は60万円を被害者に支払わなくては
ならないところを、30万円で済んだのでその謝礼として5万なり10万
円の謝礼金を加害者に要求します。
悪質な場合、といっても示談屋は皆悪質ですが(笑)、加害者には
被害者に30万円で示談してもらうのでといって30万円を受取り、実
際は被害者に5万円しか渡さないで、25万円をチャッカリもらって
しまう輩も存在します。
「そんな間抜けな被害者がいるかな~?」と疑問に感じているあ
なたにも、世の中実際に「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」で
大きな損害を被っている人が多数存在することを考えれば、納得し
ていただけると思います。
今回は、示談屋とはどんな存在かをお話しましたので、次回は示談
屋の見分け方、示談屋に騙されない方法、騙されてしまった場合の
対処法を詳しくお話します。
折角赤鬼のブログで損害額を高額に算定する知識を学んでも、示
談屋に騙されて請求できなければ何の意味もありませんので、早い
段階で示談屋の知識を頭の中にしまっておいてください。
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2008年05月25日
友人に借りた車で事故!?
【質問】
Aさんは友人が彼女とドライブに行きたいので車を貸して欲しい
といわれ、快く貸してあげました。
ところが友人はドライブの途中で重大事故を起こしてしまいます。
さらに悪いことに、Aさんは任意保険に入っていませんでした。
被害者は治療費だけで自賠責の障害部分の120万円を超えてしまった
ために、足りない治療費を車の持ち主のAさんに請求して来ました。
何故なら、Aさんが車を貸した友人はニートで、ほとんど収入がなく
貯金はもちろん全くありません。
被害者は、今後の慰謝料などもAさんに全て請求するといっています。
Aさんは友人が起こした事故なので関係ないと思い、
自信たっぷりに「でも、そんなの関係ね~!」と誰かのまねをして、
支払を拒否してしまいました。
果たして「でも、そんなの関係ね~!」で済むでしょうか?
それとも、車の保有者として損害賠償金を被害者にガッツリ支払
わなくてはならないでしょうか?
さあ、あなたなら どっち?
------------------------------------------------------------
【正 解】 Aさんにはお気の毒ですが、支払う義務を負って
しまいます。
車の貸し借りには色々な形態があり、責任の範囲が複雑です。
貸した車、借りた車が事故を起こした場合の責任は、運行供用者が
誰であるかが問題になります。
運行供用者とは、自己のために自動車を運行の用に供する者のこと
を言います。
つまり、その自動車について、運行支配と運行利益を持っている人
のことです。
ローンで車を購入する場合に、銀行からお金を借りて一括で販売会
社に支払うと、車検証の保有者と使用者は購入した人になりますが、
自動車販売会社からローンで購入した場合、返済が終了するまで保
有者の欄は「○×自動車販売株式会社」で使用者が購入者になって
います。
この場合の運行供用者は、販売会社の人がその車を使用することは
ありませんので、使用者(購入者)のみになります。
たとえ所有者が販売会社でも、購入者が事故を起こし損害の支払義
務が生じた場合に、販売会社がその債務を負うことはありません。
しかし、Aさんの場合は友人に一時的に貸していますので、運行支配
も運行利益も貸したAさんに残っています。
ですから、貸主が運行共有者として、本件事故の責任を負うことに
なってしまいます。
【おまけ】
Aさんが任意保険に入っていた場合はどうなるでしょう?
任意保険の運転者の条件欄に、運転者の限定なしとなっていれば、
この場合は問題なく保険金が支払われます。
運転車が限定されていても、対人補償の部分では免責事由にはなり
んませんが、車輌保険や搭乗者保険は免責です。
この友人が重大事故を起こし、大怪我をして車が全損になっても、
友人の治療費や車の購入費は保険から出ませんので大変です。
友人などに車を貸してと頼まれて「イヤだ」と言い難いかもしれま
せんが、保険の条件等によってはしっかり断らないと、いざという
時に痛い目似に合うことになりますので、十分ご注意下さい。
【質問】
Aさんは友人が彼女とドライブに行きたいので車を貸して欲しい
といわれ、快く貸してあげました。
ところが友人はドライブの途中で重大事故を起こしてしまいます。
さらに悪いことに、Aさんは任意保険に入っていませんでした。
被害者は治療費だけで自賠責の障害部分の120万円を超えてしまった
ために、足りない治療費を車の持ち主のAさんに請求して来ました。
何故なら、Aさんが車を貸した友人はニートで、ほとんど収入がなく
貯金はもちろん全くありません。
被害者は、今後の慰謝料などもAさんに全て請求するといっています。
Aさんは友人が起こした事故なので関係ないと思い、
自信たっぷりに「でも、そんなの関係ね~!」と誰かのまねをして、
支払を拒否してしまいました。
果たして「でも、そんなの関係ね~!」で済むでしょうか?
それとも、車の保有者として損害賠償金を被害者にガッツリ支払
わなくてはならないでしょうか?
さあ、あなたなら どっち?
------------------------------------------------------------
【正 解】 Aさんにはお気の毒ですが、支払う義務を負って
しまいます。
車の貸し借りには色々な形態があり、責任の範囲が複雑です。
貸した車、借りた車が事故を起こした場合の責任は、運行供用者が
誰であるかが問題になります。
運行供用者とは、自己のために自動車を運行の用に供する者のこと
を言います。
つまり、その自動車について、運行支配と運行利益を持っている人
のことです。
ローンで車を購入する場合に、銀行からお金を借りて一括で販売会
社に支払うと、車検証の保有者と使用者は購入した人になりますが、
自動車販売会社からローンで購入した場合、返済が終了するまで保
有者の欄は「○×自動車販売株式会社」で使用者が購入者になって
います。
この場合の運行供用者は、販売会社の人がその車を使用することは
ありませんので、使用者(購入者)のみになります。
たとえ所有者が販売会社でも、購入者が事故を起こし損害の支払義
務が生じた場合に、販売会社がその債務を負うことはありません。
しかし、Aさんの場合は友人に一時的に貸していますので、運行支配
も運行利益も貸したAさんに残っています。
ですから、貸主が運行共有者として、本件事故の責任を負うことに
なってしまいます。
【おまけ】
Aさんが任意保険に入っていた場合はどうなるでしょう?
任意保険の運転者の条件欄に、運転者の限定なしとなっていれば、
この場合は問題なく保険金が支払われます。
運転車が限定されていても、対人補償の部分では免責事由にはなり
んませんが、車輌保険や搭乗者保険は免責です。
この友人が重大事故を起こし、大怪我をして車が全損になっても、
友人の治療費や車の購入費は保険から出ませんので大変です。
友人などに車を貸してと頼まれて「イヤだ」と言い難いかもしれま
せんが、保険の条件等によってはしっかり断らないと、いざという
時に痛い目似に合うことになりますので、十分ご注意下さい。
2008年05月22日
「示談で騙されやすい後遺障害慰謝料・逸失利益」
自賠責保険と任意保険の関係を知らないと保険会社の思う壺にはまりますので、
十分な注意が必要です。
実際にどのような点に気をつけて示談交渉をしていかなくて
はいけないかというお話ですが、後遺障害申請をして等級が認定さ
せる場合、申請の仕方は2通りあることいつもお話しています。
忘れてしまった方、あるいは前号を見逃してしまった方は、
ブログ記事「加害者請求・被害者請求」をごらんください。
http://safely.blog115.fc2.com/blog-entry-42.html
被害者請求の場合は、自賠責保険の後遺障害慰謝料(逸失利益含む)
は、直接被害者の銀行口座に振り込まれるので問題ありません。
しかし、任意保険会社に後遺傷害診断書を渡して後遺障害を申請す
る加害者請求(事前認定)の場合は、先ほどの自賠責保険の後遺障
害慰謝料(逸失利益含む)は、任意保険会社の口座に振り込まれます。
そうしますと、折角後遺傷害が認定されて自賠責保険から保険金が
おりても、任意保険会社が握っていますので、示談するまで被害者
の手元に来ることはありません。
生活に余裕のある被害者の場合はいいのですが、交通事故の後遺症
が認定されるようでは、就労に支障が出て生活が苦しくなっている
被害者もいます。
そうすると、任意保険会社は被害者の生活苦という弱みに付け込ん
で、低い損害賠償金で示談を迫ります。
示談を伸ばせば伸ばすほど生活が苦しくなりますので、泣く泣く保
険会社が払い渋って提示した低い損害賠償額で示談する被害者が、
数多く存在してしまいます。
一寸脱線しましたね。
示談交渉に騙されるとはどのようなことかという話に戻します。
示談の際に総損害額計算書というものを保険会社が提示することで、
損害賠償額が分るわけですが、その中には各種の項目があり、その
計算式や根拠等が非常に巧妙な手口で払いしぶりをして書かれてい
るので、一般の被害者には見破ることができなません。
かなり慰謝料の知識を付けておかないと、まず騙されるといっても
いいでしょう。
参考までに、総損害額計算書にはどのような項目か書いておきます。
◆ 治療費(入通院)
◆ 看護料
◆ 通院交通費
◆ 雑費
◆ 休業損害
◆ 傷害慰謝料(入通院慰謝料のことです)
◆ 後遺傷害逸失利益
◆ 後遺障害慰謝料
治療費(入通院)・看護料・通院交通費・雑費についてはほとんど
問題は発生しません。
問題は、休業損害・傷害慰謝料(入通院慰謝料のことです)・後遺
傷害逸失利益・後遺障害慰謝料の算定方法は、被害者が知らない場
合は好き勝手に計算されてしまうことです。
休業損害については、前号で簡単にご説明しましたが、過去にも
かなりの回数ご説明していますので省略します。
傷害慰謝料いわゆる皆さんがよく言われる慰謝料(入通院)のこと
ですが、この算定法が自賠責保険支払基準と地方裁判所支支払準と
で、かなり計算方法が違うことも以前説明しています。
今日ご説明するのは、後遺傷害逸失利益・後遺障害慰謝料になります。
先ほどのように、被害者請求をしている場合でも、後遺傷害慰謝料
の欄は、ほとんどの場合自賠責保険が支払った額もしくは、ほんの
少し増額した額が記載されています。
後遺障害逸失利益についても同じと考えて差し支えありません。
例えば、後遺障害等級12級の場合の任意保険会社の計算書には、
後遺障害慰謝料は92万円、後遺障害逸失利益132万円このように書
いてあるか、もう少々(10万円以下が多い)増額した数字が記載さ
れている場合がほとんどです。
この金額は限りなく自賠責保険の支払基準に近い物ですので、任意
保険会社のお財布はたいして痛みません。
しかし、被害者請求した被害者の場合は自賠責保険からの振込み額
と任意保険会社の提示額にあまり差がないため、不審と不満を保険
会社に言うことになります。
しょうがなく任意保険会社は、少しだけ上乗せして示談を迫ります。
任意保険会社の提示額は地方裁判所の支払基準に比べると、かなり
低い金額ですので注意が必要です。
さあ、一番騙されやすい被害者が事前認定で後遺障害申請した場合
についてお話しします。
後遺障害認定を加害者請求(事前認定)でした被害者は、例えば
後遺障害等級12級が認定された場合に、先ほどお話した自賠責保険
からの後遺傷害慰謝料と後遺障害逸失利益の金額を知らない被害者、
自賠責保険の存在を忘れている被害者、又は後遺傷害慰謝料が自賠
責保険から支払われていることを知らない被害者は、任意保険会社
の提示額を鵜呑みすることになります。。
被害者が自賠責保険と任意保険との支払構造を知らないことを良い
ことに、任意保険会社は自賠責保険から支払われた保険金のことを
被害者に一切説明せず、あたかも全額を任意保険会社が支払ったよ
うに被害者に説明します。
被害者はてっきり任意保険会社が後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利
益の全てを任意保険会社が支払っていると思っていますので、すず
めの涙ほどの慰謝料の増額に満足して示談してしまいます。
例えば、多くの任意保険会社が提示する保険会社独自の支払基準に
よる12級の後遺障害慰謝料は100万円ですが、自賠責から92万円が出
ますので、任意保険会社はたったの8万円を支出しただけで100万円
払うと偉そうに言うことができてしまいます。
自賠責保険から92万円が出ているにもかかわらず、被害者には
「100万円も我が社から出しているのですから、これで示談しても
らえませんか?」と被害者にさも自社が沢山支払っているような口
ぶりで、示談を迫ります。
本来はたった8万円の支出を、100万円といってしまう保険会社の手
口には十分注意してください。
参考までに、地方裁判所支払基準では、後遺障害等級12級の場合の
後遺傷害慰謝料は290万円で、自賠責と198万円、任意保険と190万円
という大きな差があります。
後遺障害逸失利益は、自賠責は定額の132万円ですが、地方裁判所
支払基準では、被害者個々の収入と支障によって計算します。
30代の標準男子サラリーマン等では逸失利益の金額は地裁基準では
1000万円以上になりますので、安易に示談をすると任意保険会社の
儲けを助ける結果になり、新しい高層ビルの本社に寄付をするよう
なものです。
132万円と1000万円の差を、示談の後に知ってしまったら、あなたな
らどうします?
そのようなことにならないよう、交通事故損害賠償の知識を赤鬼の
ブログで十分に勉強していただき、正当な損害賠償金を受取って
くださいね。
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2008年05月15日
■ 示談書の書式
示談書は、法律で一定の書式が決められているような気がしますが、
これだけは書いておかないと法律上無効になってしまうというよう
な記載事項はありません。
しかし、交通事故で示談する場合のほとんどは加害者の債務を委任
された任意保険会社ですので、同じような書式になります。
若干の違いとしては、示談書とするか損害賠償に関する承諾書、い
いわゆる免責証書と呼ばれる物にするかですが、必要な記載事項は
同じで、次のようになります。
記載順序は保険会社により若干異なりますが、自賠責保険会社では
ほぼ同じです。
-------------------------------------------------------------
示談書
事故発生日時
事故発生場所
当事者 甲 (加害者) 住所 氏名 車両の登録番号
当事者 乙 (被害者) 住所 氏名 車両の登録番号
事故原因・状況
示談内容
損賠償額受領方法 振込み銀行口座情報など
上記の通り示談が成立いたしましたので、今後本件に関しては双方
とも裁判上または裁判外において一切異議、請求の申立をしないこ
とを誓約いたします。
平成 年 月 日
当事者 甲(捺印者の立場) 住所
氏名 印
(捺印者の立場) 住所
氏名 印
当事者 乙(捺印者の立場) 住所
氏名 印
(捺印者の立場) 住所
氏名 印
※ 捺印者の立場 甲:車の保有者・運転者
乙:親権者・代理人
------------------------------------------------------------
以上は自賠責保険や加害者と被害者が直接示談する場合に、でよく
使われる示談書の書式ですが、任意保険等の損害賠償額が高額にな
る場合や後遺症が関係する示談では次のような書式を使っています。
------------------------------------------------------------
損害賠償に関する承諾書(免責証書)
当事者 甲 殿 平成 年 月 日
当事者 丙 殿
当事者 丁 殿
当事者 乙 氏名 印
当事者 甲 (加害者) 住所 氏名 車両の登録番号
当事者 乙 (被害者) 住所 氏名 車両の登録番号
当事者 丙 (甲の使用者又は
甲車両の保有者) 住所 氏名
当事者 丁 (任意保険会社) 保険会社名
事故 年月日 平成 年 月 日 時 分頃
事故発生場所
上記事故によって乙の被った一切の損害に対する賠償金として、
乙は当事者甲・丙および丁より既払い額 円の他に 円
を受領した後は、その余の請求を放棄するとともに、上記金額以外
になんら権利・義務関係のないことを確認し、甲・丙および丁に対
し今後裁判上・裁判外を問わずなんら意義の申し立て、請求および
訴の提起等をいたしません。
つきましては下記の方法により損害賠償金をお支払下さい。
◆ 銀行口座情報
------------------------------------------------------------
このような書式で示談しますが、今後の後遺症が心配な場合は、
次の文言を上記の中に入れた方が良いでしょう。
◆「尚、後日後遺障害が発症又は認められた場合、別途協議する
ものとする。」
この文言を入れることで、示談後に後遺障害が発症した場合、円滑
に協議に入ることができますので、付け加えるようにして下さい。
■ 示談と錯誤
これで示談書の書き方はご理解できたことと思いますが、示談した
後のことを結構勘違いをされる人がいますので、2~3ご説明します。
示談をしてしまうと何を言っても後の祭りだから、示談の際は騙さ
れないよう慎重にしなくてはと思う人が大半だと思いますが、その
理由については前回お話した通りです。
高度成長期に暗躍した「示談屋」と呼ばれる人たちが弱い被害者か
ら示談金を騙し取った悪行が、現在でも尚色濃く人々の心の中に残
っている事による示談への恐怖心が、示談交渉に過剰な反応を示す
被害者を多く存在させています。
最近では「示談屋」による被害はかなり減ってきましたが、示談に
対しては次のようなこともあり、違った意味での注意が必要です。
悪意を持って示談書を作成した場合、例えば「本件に関しては今後
名目のいかんに関わらず、当事者双方はなんらの請求をしないこと」
という示談書で和解したとします。
これですと、今後損害が発生した場合でも一切の請求を認めないと
いう内容ですので、先ほどご説明した明らかに交通事故と因果関係
がある後遺症が発症した場合でも、全く何も請求できない事になり
ます。
これではあまりにも不公平な被害者が出てきますので、それらに対
する救済措置があります。
この場合は、訴訟になってしまいますが、示談締結時の状況を調べ
示談金額と実際に被った損害額に著しい不均衡が生じた場合、実際
に事実が不公平であれば先の示談の拘束力はそこまでは及ばないと
する判断で、示談を無効にすることが可能です。
簡単にいえば、示談したときの損害賠償額とその後事故が原因で発
生した後遺症に関わる損害賠償額があまりに違う場合です。
先ほど、「尚、後日後遺障害が発症又は認められた場合、別途協議
するものとする。」という文言を追記する方が良いというお話は、
このような場合に有効になります。
この記述がないと、示談の際に今後の後遺症発症の可能性も認識し
た上での示談と解釈されますが、「今後の後遺障害も含んで」とい
う言葉が示談書に記載されていなければ、方法はあります。
その示談の効力を無効にする言葉が「錯誤」です。
示談の際「思い違い」をしていたことを錯誤といい、示談の効力を
無効にすることができます。
これはどのようなことかといいますと、「まさか後遺症が発症する
とは示談の時は思わなかった。」ということを主張するわけです。
言い換えれば、この先後遺症が発症することが分っていれば、その
損害を請求しないで示談する人はいないということです。
そこに錯誤があった、「思い違い」があったから示談してしまった
ので、現状の後遺障害が発症した時点では発症する前に締結した示
談は無効ということを主張するわけです。
※注 錯誤は主張すれば何でもかんでも認められる物ではありません。
錯誤を立証するにはそれなりの信憑性のある事実確認がなされます
ので、不用意な認識で示談をしてしまった場合は、錯誤を認めても
らえませんのでご注意下さい。
示談を無効にする他の理由としては、信義則もしくは公序良俗違反
により無効ですが、交通事故の場合はほとんどが後遺症がらみの錯
誤といってよいでしょう。
今回は、間違った示談知識として「示談書の法律上の書式は無い」
こと「一度締結された示談でも無効とすることができる」という
お話でした。
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