2008年03月
2008年03月12日
■ 被害者が知っておく最低限の示談交渉知識
交通事故損害賠償請求の始発駅は事故発生ですが、終着駅は加害者
との損害賠償の解決です。
一言に解決といっても、そこにいたるまでには以下のようないくつ
かの違った経過を経る事になります。
◆ 直接加害者と被害者が話し合う
◆ 加害者の代理人(任意保険会社を含む)と被害者で話し合う
◆ 日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センターのよ
うなところで、和解(あっ旋)をしてもらう
◆ 本人訴訟を含む裁判の判決によるもの
本日のお話は、交通事故損害賠償請求の終着駅のひとつ示談交渉に
ついてですが、これからしばらくは示談を中心にして慰謝料やその
他の損害についてお話していきます。
今回は、示談についての総合的な知識をお話していきますが、そも
そも示談の意味を一般の方は正確にご存知でしょうか?
交通事故といえば示談、以下はほとんどの方が無意識に頭の中に浮
べるイメージです。
▲ 示談書にすぐ印鑑を押してはいけない
▲ 良く調べてから示談しないと騙されて大変な事になる
▲ 後遺症が残ったら大変なので、すぐに示談をしてはいけない
示談は騙されるというイメージがあり、そのイメージ傾向は年齢層
が高くなるにつれ強くなります。
理由としてはかつて日本の高度成長期、いわゆる交通戦争といわれ
た時代にさかのぼりますが、自動車保有者ならびに運行台数が急激
に増えているにもかかわらず、強制保険は別として任意で自動車保
険に加入するという意識が薄く、任意保険に加入する人はごくわず
かであったため、結果として加害者と被害者が直接話し合いをし示
談するケースが多く存在しました。
いつの時代でもそうですが、必ず弱い人間や知識がない人間と、そ
ういう人たちを騙してお金を巻き上げる詐欺師が隣り合わせに存在
します。
現代では身内の交通事故を装って家族から示談金を騙し取る「オレ
オレ詐欺」が横行していますが、高度成長期の日本では「示談屋」と
呼ばれる人たちが多数存在しました。
「示談屋」は読んで字の如く示談を生業にする人たちのことですが、
内容は詐欺師です。
詐欺師でない場合、示談交渉を加害者や被害者に代わって行い報酬
を得る行為は※弁護士法七十二条(非弁行為といいます)に抵触し
ますので、いずれにしても犯罪に関わっている事になります。
先ほどの示談に対する3つのイメージは、いずれも示談屋によって
騙された被害者(場合によっては加害者・被害者双方)の話が、交
通事故に遭ったことがなく示談などに無関係な人々に、都市伝説の
ように広まった結果ですが、示談屋が年々減少していることを考え
るとをそれはそれで効果があったのかもしれません。
(※ 弁護士法七十二条及び七十七条 弁護士でないものが報
酬を得る目的で訴訟事件その他一般の法律事務に関して、相
談、代理もしくは和解その他の法律事務を取り扱うことを業
としたときは、二年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金
に処す)
ここで余談ですが、示談屋が示談交渉をすると非弁行為で罰せられ
るにもかかわらず、何故自動車保険に示談代行特約があり、保険会
社の人間が示談交渉をすることが出来るか疑問に思われる方もおら
れると思いますので、簡単にご説明します。
そもそもは、昭和49年に損害保険会社が示談代行特約付の自動車保
険を販売しようとした経緯と問題点についてご説明します。
このころになると任意保険に加入するということが、自動者を運行
するものにとって生命保険に入ることと同じくらい重要であると認
識されるようになり、加入者数も増加の一途をたどります。
加入者数が増えることは保険会社にとっては嬉しいことでしたが、
そこにある問題が発生します。
それは、増え続ける交通事故の示談交渉に対し弁護士の人数が不足
したため、物損の軽微な事故でも示談が成立するまでかなりの日数
を要し、被害者のみならず加害者からも早く示談をするように保険
会社に多数の苦情が寄せられたため、やむなく示談交渉を保険会社
で代行しようとしました。
しかし、そこには先ほどの弁護司法第七十二条の非弁の問題があり、
案の定日弁は損保協会に「弁護士以外の者が、報酬を得る目的で業
として他人の法律事務を取り扱ってはならない」と意見書を差し入
れました。
一方損保会社は、示談代行が法律事務であり業として行うことを認
めましたが、約款で示談代行は保険会社の費用の負担で実施される
ため報酬を得てはいない、他人の法律事務に介入する点については、
実質的に社会に害を及ぼすわけではないと主張します。
実際に、昭和46年の最高裁大法廷の判決では、弁護士法七十二条に
関する内容で、「弁護士の資格もなく、何らの規律にも服しない者
が、私利を図ってみだりに他人の法律事件に介入することを反覆す
るような行為を取り締まれば、事が足りる」としています。
用するに、示談屋のような輩が法律が関与する案件に参入し、詐欺
まがいの行為で金銭を受取る行為は取り締まるべきだが、金銭の関
与がない部分については、あまり杓子定規にこの法律を使う必要は
ないという判断です。
損保協会と日弁連により意見調整を行った後、以下の条件を満たす
ことで日弁連は昭和48年示談代行付保険の発売を認めています。
◆ 示談代行は保険会社の社員に限る
◆ 被害者直接請求権を導入導入する
◆ 任意保険支払基準の作成 (平成14年保険の自由化で廃止)
◆「交通事故裁定委員会」の設立 後の交通事故紛争処理センター
◆ 対人賠償保険金無制限の導入
示談代行保険は以上の条件を満たすことで昭和49年3月に発売されま
した。
このような経緯で保険会社の社員が弁護士法に抵触せず示談の代行を
することが出来るようになっています。
注)任意保険会社の社員が示談代行するには、保険に加入している加
害者の債務が全て保険会社に委任されていることを最低条件とし
ます。
「示談屋」の話から思わぬ展開になってしまいましたので、次回肝
心な示談の法律上の意味と、加害者と被害者が直接話し合って示談
をするときどこに注意しなくてはならないかお話したいと思います。
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【おまけ】 示談と訴訟どちらがいいの?
交通事故の解決においては、示談・調停・訴訟の概ね3通りあります
が、実際問題どのような場合にどの方法が良いかと聞かれた場合に、
一概にどれがよいとはいえない部分が多々あります。
ありきたりな言い方をすればケースバイケースという事になります
が、そのケースバイケースの事例が非常に複雑ですので、不幸にも
交通事故に遭遇してしまったら、できるだけ沢山の正しい知識を入
手し、巷のシッタカさんの間違った自己知識に惑わされないことが
大切になります。
日ごろから、交通事故損害賠償について興味を持っていただく事が
ベストですが、何事に関しても人間やはりその状況になるまでは
「私だけは大丈夫!」と思ってしまいます。
もし交通事故でお困りの時はいつでも相談してくださいね。
ご相談受付URL
http://www.formpro.jp/form.php?fid=20927
赤鬼の「ザ・慰謝料」【完全版】は、示談交渉のパイオニアです
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